膝の疾患

変形性ひざ関節症

「ひざの軟骨がすり減っています。」こう言われたことはありませんか?

変形性ひざ関節症とは、「ひざの軟骨や半月板がすり減る病気」です。

軟骨は年をとると、劣化をおこし徐々にすり減ってきます。

半月板も劣化して、急に断裂したり、徐々にすり減ったりします。

以前、ひざを怪我したことがある方は、症状が早く起こります。

国内の調査によると、レントゲンで変形を認めるものの症状のない患者さんは2400万人で、痛みのある患者さんは820万人と言われていますa)

高齢化が進んでいる昨今、その数はさらに増える見込みです。

通常、内側の軟骨や半月板ばかりがすり減る方が多く、初期・中期には痛み止めの飲み薬や、ヒアルロン酸注射、足底板という装具、筋力トレーニングなどで治療します。

しかし、程度がひどくなると、

ひざが痛くて長い時間歩けない

ひざが曲がってO脚になる

などの症状が出てきます。

このように進行してくると、外出しづらくなって生活が楽しくなくなったり、脚の筋肉が弱ってしまい、寝たきりになることもあります。そのため当科では以下のような治療を行っています。

 

① 骨切り術

内側の軟骨や半月板がすり減っている人でも、多くの場合、外側の軟骨や半月板は正常に近い状態で保たれています。そこで、太ももや、すねの骨を切って向きを変え、脚全体をややX脚にします。すると、体重の多くを外側の軟骨や半月板で支えることができるようになり、ひざの内側の痛みを減らすことができます。多くの場合、脛骨(すねの骨)の内側を切って1cm程度開く(内側開大型脛骨高位骨切り術と言います)ことで目的を達成できますが、もともとの脚の形や軟骨のすり減り具合によっては、脛骨の外側を切って閉じたり、大腿骨(太ももの骨)を切ったりします。

もっとも一般的な、内側開大型脛骨高位骨切り術について術後の流れをお話ししますと、

l  手術翌日からリハビリを開始します。

l  術後数日が経つと、手術したひざに体重をある程度かける練習を開始します。

l  術後10-14日程度で抜糸を行います。

l  術後2週間が経つと、手術したひざに全体重をかけて歩く練習を開始します。

l  術後3-4週間で、杖歩行で自宅退院となります。切った骨がくっつくまで、しばらくの間は杖歩行をお勧めしています。

合併症は、感染深部静脈血栓症(肺塞栓)出血による輸血の可能性遷延骨癒合(骨がなかなかつかないこと)の可能性などがあります。

骨切り術前1骨切り術前2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

骨切り術後1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

骨切り術後2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

② 人工関節置換術

軟骨のすり減りが強く、骨切り術を行なっても痛みが取れないことが予想されるときに行う手術です。すり減った軟骨や骨を1cm程度平らに切りとって、金属のキャップをはめます。(全部金属にかわることを心配される方がいますが、表面を置き換えるだけです。)日本では2014年の1年間で87000例行われましたb)。年を追うごとに増加しています。

手術を受けられる方は通常60歳以上、手術時間は2時間程度です。最近は、元気な高齢者が増えたため、80歳台後半でも受けられる方が増えてきました。内側も外側も交換する手術(TKA)と、内側だけを交換する手術(UKA)があります。全国的にTKAの方が一般的で、UKAよりも多く行われています。

TKAにおける術後の一般的な流れをお話ししますと、

l  手術翌日からリハビリを開始します。ご高齢の方でも多くの方が2-3週間で歩行器歩行できるようになります。

l  手術から2週間程度で抜糸を行い、リハビリ病棟に移ってリハビリを続けます。

l  手術から3-6週間程度で、杖歩行が安定し、自宅での生活ができるようになって退院されます。リハビリの進み具合は、かなり個人差があります。高年齢手術前にあまり歩けていなかった方腰や反対の膝が悪い方は、リハビリが長くなる傾向があります。

合併症は、感染深部静脈血栓症(肺塞栓)出血による輸血の可能性弛みによる再置換の可能性などがあります。ご高齢で受けられる方が多いため、脳梗塞心筋梗塞など、若い人では起きにくい重篤な合併症にも注意が必要です。

 

人工関節術前1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人工関節術前2

 

人工関節術後1

 

人工関節術後2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近の報告では、術後30年で92.4%の方が再手術をせずに使用することができたという報告c)も出ており、インプラントや手術手技の向上によって、以前よりも長持ちするようになってきています。

なお、当院では2018年よりナビゲーションを導入しております。これにより、人工関節を設置する際の正確性向上に努めております。

 

なお、当科外来に①骨切り術、②人工関節置換術、のパンフレットもご用意しておりますので、ぜひお読みください。

 

 

文献)

a)    吉村典子, 他. 変形性関節症の疫学研究: ROAD(Research on Osteoarthritis Against Disability)プロジェクト. 日本リウマチ学会・学術集会, 2008

b)    岡崎 賢, 岩本 幸英. 高齢期における整形外科手術の意義. Geriat. Med. 53(12):1241-1244, 2015

c)    Ritter MA, et al. Twenty-Five-Years and Greater, Results After Nonmodular Cemented Total Knee Arthroplasty. J Arthroplasty. Oct;31(10):2199-202, 2016

 

2020年3月

当科の人工膝関節手術症例数

年度 骨切り 人工関節(TKA+UKA)
2016年 22例 51例
2017年 22例 58例
2018年 34例 67例